ごあいさつ | 岩月進

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公益社団法人 日本薬剤師会 会長

公益社団法人
日本薬剤師会 会長

Susumu Iwatsuki 岩月 進

ご挨拶

我が国では、幼少教育の段階から広くスポーツに触れ、生涯を通じてスポーツに取り組むことや、地域でそれらスポーツの機会を教授することも少なくなく、国民にとってスポーツが身近な存在であることが、健康寿命の延伸に大きく寄与してきたと考えます。しかしながら、こうした各種スポーツに熱心に取り組み、健康に注意している人であっても、体調不良を全く起こさないということは難しく、その際、意図せずドーピング対象成分を服薬しないよう、我々薬剤師が存在します。

薬剤師の基本的な機能のひとつに、服用者の生活背景を理解し、支えることがあります。ことアンチ・ドーピングにおいては、スポーツ選手が安心して薬物治療を受けられるよう関与していくことが肝要であり、これこそが薬剤師法第一条に求められている「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」という使命に他なりません。

薬剤師は、医療者として、多職種と連携しながら職能を発揮することが求められています。それは処方箋調剤や販売のみならず、2003年から取り組んでいるアンチ・ドーピングに係る活動も同様です。人生100年時代と言われて久しい現在、スポーツを含めた健康維持・増進に係る取組がさらに推進されること、また、医薬品の提供を通じ、地域の薬剤師・スポーツファーマシストがその一翼を担うことが望まれます。

特に、スポーツファーマシスト認定制度という、スポーツ選手やその家族、サポートスタッフの心強い相談先が確立されていることが、選手等への安心感に繋がっていると認識しています。同認定制度により認定を受けた薬剤師は、国民スポーツ大会に向けた情報提供・啓発活動、学校教育の現場における医薬品の適正使用を含めた情報提供・啓発活動や、アンチ・ドーピング教育啓発活動における講演会での講師等、薬局外での活躍も目覚ましいものがあります。

さらに、JADA・J-Fairnessのご尽力により、スポーツファーマシストを検索できるサイトが運営されていることで、選手等は安心して生活圏域・トレーニング圏域で過ごすことができていると認識しています。

このほか、日本には学校薬剤師という制度があります。幼稚園、小学校、中学校、高等学校には、学校医、学校歯科医とともに、学校薬剤師を設置することが法律により定められています。その教育現場には将来のアスリートを目指す子ども達もいることでしょう。子供のうちからアンチ・ドーピング、健康、医薬品の適正使用に関する教育をすることによって、将来的にはアンチ・ドーピング規則違反をさらに減らすことはもちろん、禁止薬物を使用させないことや、医薬品の適正使用により、人々の健康に繋がると考えます。

こうした活躍の中でも、国民スポーツ大会だけではなく全国障害者スポーツ大会においても薬剤師・スポーツファーマシストによるアンチ・ドーピング活動が進められていることから、今後の各種大会の開催においても引き続きの活動を期待しているところです。

末筆ながら、JADA・J-Fairnessと引き続き連携し、スポーツファーマシストの推進・発展及び一層の社会貢献を叶えることを目標とし、ご挨拶とさせていただきます。